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自由に生きる現代女子を応援するリレー連載ブログ

28歳 大学院生(1)

20112月—

『私はアカデミックに残るのではなく、企業に就職をする』

それが私の決めた自分の進路だった。

 

大学を卒業後、大学院の修士課程に2年間在籍し、

3年間の博士課程に進んだ私は、このまま大学や研究所で研究者の道を進むか、

それとも企業に就職をするか考えていた。

 

その時の私に影響を与えた出来事は、

自分の論文を出す目処がたったこと

ママさん研究者の姿を実際に目にしたこと

2つだった。

 

自分の論文を発表してみて

大学院の博士課程に進んだからには自分の論文を発表する。

それがみんなの目標で、そのために時間も関係なく一生懸命実験する。

就職を決断したのは論文の修正がほぼ終了し、

自分の一番の目標を達成する直前だったと思う。

次の目標は何にしよう・・・

そう考える余裕が出来て初めて自分のやりたいことを見つめ直した。

研究者として新しいことを発見し、論文を発表、

その業績を元に研究費を獲得して、また新しいことを発見する資金にする。

そのサイクルは将来何かを生み出すには絶対的に必要なことで、

誰も知らなかったことを発見した時の達成感は何者にも代え難い。

でも目の前の目標に向けて頑張りたい私にはあんまり向かないかな・・・。

それよりも企業人として、

研究した成果を元に物を生み出し、それが誰かの役に立つ方が、

目標が分かりやすくて私には向いている気がした。

大学4年生の時から大学の研究室を出て癌研究を続けて来た。

5年間病院に隣接する研究所で研究をし、毎日患者さんの姿を目にして来た。

患者さんのためになるものを作る仕事が出来ればいいな・・・と単純に思った。

 

ママさん研究者のそばにいて

研究者の世界は女性にはかなり厳しいものなのだということを実感したのは、

小さい子供を持つママが研究室に来てからだった。

2人いたママさん研究者のうち1人は出産してから1年ちょっとで研究者を辞め、

堪能な語学を活かして弁護士事務所に転職した。

もう一人は研究者を続けているけど、

任期3年のところを2年で辞め、他の研究所に移って行った。

その研究室の教授によるのかもしれないけれど、

私が所属している研究室の教授はいわゆるクラッシャー上司で、

自分の思い通りにみんなが動いてくれないと怒鳴って責める。

「最初は子供のこともあるから時間は自由に使っていいよ。」

と言っていても、子供の体調不良等で遅刻早退が増えると

「仕事が進まなすぎる。やる気あるんか!?」

と怒鳴ったりする。

もちろん教授が出産育児経験者の女性である研究室や、

子育てにとても理解のある男性教授の研究室もあるけど、

研究者は基本、自分の業績だけを糧に生きて行く職種である。

だから出産や育児で研究にブレーキがかかると、次の仕事も見つかりにくい。

特に最近は終身雇用のポジションなんてほとんどないから、

若いうちに子供を産んで、育てながら次のポジションを探すのは至難の業だ。

子育てに理解のない教授もまだまだ多い。

いくら女性研究者支援の予算が割り当てられるようになっても、

やはり周りの理解がなくては制度の意味がない。

自分にとって結婚や出産がリアルに感じる年になって、女性研究者の厳しさを痛感した。

やっぱり企業だな・・・ママさん研究者の姿が私の決断を後押しした。

 

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教授にキレられながらながらも就職活動をやり通し、

念願の製薬会社の内々定をいただけたのは今年の4月。

今は「裏切り者!」とか教授に言われながらもなんとか研究を進めている。

まぁ、週に3回も4回も怒鳴られればかなりキツいけど・・・

ここで負けたくない!!っていう意地だけでやってる感じ。

 

土日も関係なく教授からの電話やメールが来て、

ピリピリ、イライラしながらも続けていられるのは、

生活を支えてくれる家族と、息抜きの時間を与えてくれる友達、そして彼の存在があるからだと思う。

 

大学2年生の頃から一緒にいる彼とは今年で7年目。

ずっと側で見守ってくれている。

ここ5年くらいは、平日は実家、週末は彼の家という週末同棲状態で、

荒れたりへこんだりする私の話を聞き、

ちょっとのんびりしたアドバイスをしてくれている。

研究室に入ってからは、いつ教授から電話が来るか分からないし、

実験の手を止められないしで、

旅行に行っても最長12日。

デートの途中で研究室に走って行ったことも何回もある。

常に私の都合に合わせてくれる彼の行きたい所へいつかゆっくり行こう、

それが密かに考えている私の恩返し。

面と向かってはなかなか言えないけど、

これから先もずっと一緒にいられたらいいな。

いつもありがとう。

 

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研究者ではなくても、女性が生きにくい世界は沢山あると思う。

その中で新たな道を作って行くのも、

自分らしく生きられる別の道を探すのもどっちもステキ。

 

来年の4月からは28歳にして初社会人。

薬が出来るのは30000分の1というとても低い確立で、

定年まで働いたけど世の中に薬を届けられなかったっていうこともザラにあるけど、

自分が決めた道をまずは全力で駆け抜けたいと思う。

早く4月にならないかな〜。

 

 

記:オカモト

 

↓週末の夜はここに座って色んなことをおしゃべり。私の充電タイムです。

 

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